それは、数字の話ではありません。
家の空気が変わった、ある家族の話です。
ある日の夕食後
ニュースが流れる。
「来月より電気料金を値上げします」
夫は箸を止める。
「またか…」
去年も上がった。
その前も上がった。
少し下がった月は、
なぜか“得した気分”になった。
でもそれは、
誰かに決められた数字だった。

以前の我が家
封筒が届くたびに、空気が重くなる。
「今月いくら?」
エアコン、つけすぎたかな。
洗濯、まとめたほうがいいかな。
冷蔵庫、買い替えたほうがいいかな。
生活を変えたのに、
請求額は変わらない。
変わるのは、気持ちだけ。
小さな決断
「作れないのかな、うちで。」
最初は半信半疑だった。
太陽光。蓄電池。売電。
節約のためというより、
もう振り回されたくない
それが本音だった。
半年後
またニュースが流れる。
「電気料金、再び値上げへ」
夫が言う。
「上がるんだって。」
妻は答える。
「そうなんだ。」
それだけ。
焦りがない。

月末
晴れた日が続いた今月。
屋根の上では、
昼間、静かに電気が作られていた。
冷蔵庫も、洗濯機も、エアコンも、
自分たちの電気で動いている。
余った分は、
そのまま売電。
封筒を開ける。
「今月、プラスだよ。」
以前は“請求書”だったものが、
“入金”の確認になった。
変わったのは、家の空気
電気料金が上がるか下がるかで、
会話が変わらない。
エアコンをつけるときに、
罪悪感がない。
「これ、旅行積立に入れとく?」
売電収入は、
温泉旅行の資金になる。
子どもが言う。
「電気が旅費になったね。」
笑いが起きる。

気づく
電気料金を守るというのは、
節約の話ではなかった。
感情を揺さぶられない生活。
ニュースに左右されない家。
封筒が届いても、
家の空気が変わらない。
それが、
家計を守るということだった。
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